Monday, June 7

ハイチ雑感 - 街の中

街の具合はいかがかというと、やはりまだ崩れた建物が多く残っていて、ようやく片付けに手がつき始めた感じだ。マーケットは意外とモノがあふれている。季節モノのマンゴーやバナナが売られている。燃料の炭も売る様子が見られる。ゴミがあふれかえっており、異臭を放っているところもある。多くの車や人が行き交い、ひしめき合っており、日常生活は活発さを取り戻しているように見える。

地震災害は、崩れた建物とそうでない建物の差が激しい。十分な耐震設計もなく建てられたコンクリート施設は、ペッシャンコになってしまっているし、木造の建物なんかは意外と残っていたりする。無理に2階、3階を積み重ねて作った家なんかは被害が大きい。柱が十分に支えきれなくて、前のめりに倒れた施設もあった。地震による被害なのか、取り壊しが始まっているためか、ボロボロに破片になった家が随所にみられる。

とある壊れた診療所の柱を観てみると、見事なくらい鉄筋が入っていない。一本の鉄筋がまっすぐに入っているのもあった。鉄筋がしっかり入っていて巻き線してあるのにグニャッと曲がっているのをみれば、相当なエネルギーがかかっていたことが分かる。ハリケーン対策用に重い屋根、頑丈な家作りを志向したばかりに、地震災害への備えは不十分となったようだ。コンクリートの骨材も無茶苦茶で、大きな石や丸石が混じっていた。

ハイチには日本のように高架道路はなく、列車も走っていないので、公共輸送は意外と復旧が早いようだ。水道は途中で破損しているのか、給水の時間になると道路脇での水漏れが発生する。(24時間の配水は行われていない。)崩壊した建物の瓦礫が道路を封鎖していて、道路渋滞が激しい。片づけを始めた住民が、自宅の前の道路に瓦礫を捨てているせいもあるだろう。歩道上にテントを張って生活している人も多い。壁があってタープを張りやすく、風雨を凌げやすいからだろうか。

東京よりも人口密度が高く、世界一ともいわれるポルトープランス(Port-au-Prince)は過去最大の死者・負傷者、行方不明者を出した。そんな中でもようやく緊急フェーズが終わって、復旧に手がつき始めた印象だ。日赤による緊急医療チームも、緊急フェーズを抜けたと言っていた。慢性疾患の患者の受診が増えてきたようだ。もともと医療サービスの乏しかった経済状況だから、こうした医療サービスへのニーズは高いようだが、緊急医療チームが提供できるサービスとのギャップはある。十分な処方薬も持ち合わせていないのだが、患者からはそれが不満になったりする。難しいジレンマと言える。

街の正常化とともに、あちこちで瓦礫を取り壊す風景や、新しくブロックを積み上げる様子が伺える。それでも目線を変えてみれば、ぼーっとしている住民も少なくない。震災のトラウマもあるのだろう。公園や中央分離帯と言ったスペースには、テント村が広がっている。もともと住環境が厳しかったポルトープランス。最近になって各国援助機関の支援が入っていることを目当てに、都市に住人が回帰しているという。貧しさゆえに支給物資に頼る生活に利便を感じる住民も少なくない。すでに街の人口許容度は一杯である。テント村で過ごす人が増えれば増えるほど、そこから復興し、新しい住居を手に入れることも困難が予想される。こうしたテント村の風景はしばらく残ってしまうのかも知れない。雨期に備えて2重3重にタープを張ったり、板張りのテントもある。それぞれの状況でいろいろな危機に備えなければならないが、日中の日差しの中では相当に中が暑いだろう。

街の至るところで瓦礫やゴミが側溝や水路をふさいで、排水があふれかえっている。雨あがりの道路はウォータースライダーになってしまっているところもあった。6月に入って雨期が近くなり、ハリケーンのシーズンも迫っている。森林資源を燃料として取り尽くしてしまったハイチは、洪水による土砂災害のリスクが高い。実際、山ははげ山に近いものがある。そんな山に居住する避難民のテントも見える。昨夜も豪雨があったが、とても耐えられる状況ではないように思う。

ドイツの援助機関(KfW)が排水溝のクリーンナップキャンペーンをしているが、住人が捨てる土砂や生活ゴミが累積していて、なかなか捗っていないようだった。震災後の2次災害を抑えるべく今後の対応が望まれるが、抜本的な解決策はあまり無い。

休日、改めてホテルの周辺を歩いてみると、ホテル自体微妙な状況であることが分かった。プールに水が溜められているのが、不思議なくらいだ。事実、2/3が被災している状況で、柱や壁面にクラックが入っているのが確認された。抜本的な復旧には、総建て直しをする必要があるようだ。

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