Thursday, December 3

winter illumination - reflections of the cities

東京の人口は、首都圏で見たときに、3千4百万人で 世界最大の都市といわれる。高校の頃はメキシコシティーの2千万人が最大と聞いていたから、ちょっとした驚きだった。新宿駅の一日の乗降者数は3百万人。JRだけで100万人。大雑把ながら、首都圏人口の10分の1が毎日、新宿を行き来していることになる。

師走に入って、街のイルミネーションはますます明るく、華やかさを増している。先月実家に帰った際、地元の駅前の街路樹が綺麗に彩られていて、少々引いた。人通りの多い都会ならまだしも、人がまばらなエリアでの青色ダイオードの装飾演出は、何だか寂しい感じがする。実験室の紫外線ライトや無菌室の抗菌ボックスみたいな、そんな冷たさを連想してしまうからだろう。

最近公開になった映画「0の焦点」で、銀座のネオンを眺めるシーンがある。戦後復興の中で、少しずつ増えていく街の光は、豊かさの時間、人々の希望を必死に照らし出していたように思う。今年の初めに観たサイモンバクバーニー演出の「春琴」では、陰影礼賛を失った明るい街の日本を終幕に入れ込んでいて、強烈なメッセージが観客に投げられていた。まぶしくて、音のあふれる駅前の風景そのもので。視点を変えて、宇宙から見た夜の地球。大方の都市が、白熱灯や水銀灯の橙色で浮かび上がっているのに対し、日本周辺は青白く浮かんで映る。蛍光灯や白色水銀灯が多用されているからとのこと。未だに地方では暗闇があって、夜の道も気をつけなければならないが、東京は総じて明るい。雲が降りている夜には、空を照らしたような淡い光の幕に包まれているような感覚を得る。

いつ頃から日本の街はこんなにも冬の照明に凝りだしたのだろうか、誰が誰のために夜の街を演出するのだろう。しかもどれもがクリスマスのテイストで。街を歩けば、店に入れば、心地よいJazzのBGMもクリスマスソングだったりする。どこもかしこも。ベルやサンタ、トナカイのアイコンが溢れ、NEWSでは、どこかの地方の灯台をサンタの顔にデコレーションしたところもあると言う。大手町、六本木、新宿、渋谷、表参道、横浜、どこも競うように煌びやかな電飾が取り付けられている。欧米の街並みでは、所謂有名どころのハイストリートとか限られた商業施設でしか見られなかったのに。Politically Collectと言って宗教色の無い冬の演出が多くなりつある欧米では、大都市での演出は特に控えめだ。お店に入ってクリスマスソングはなかなかお目にかかれない。

そんな欧米が11月のthanks givingからクリスマスの25日までウィンター商戦に入って、26日のBoxing Dayからバーゲンモードとなって冬のイベントが収束していくのとは対照的に、25日を境に、一気に年末モードに入っていく日本の生活文化も面白いとは思いつつも、それでいると、年賀状作りには間に合わないのでうっかり忘れそうになる。

12月の冬の演出は、クリスマスではなくても、年末年始そのものであっても良いはずなのだけど、街の見た目にはそうは思えない。少し歳を取って、生活のリズムが変わってくると、年末の挨拶などを考え始めると、クリスマス一色でもないのだけれど、それでも街の作り出す雰囲気は、一種、日本独特の演出とも言える。ロンドンにしたって、ニューヨークにしたって、こんなに派手に照明で雰囲気作りをしてくれるところは、他にないだろう。新宿南口なんて、まるでディズニーランドに入ってしまったかのような錯覚すら覚える。しかもそんな演出は2月のバレンタインまで延々と続いていたりする。

冬の街並みの演出は、誰かが誰のために、というのでもなく、単なる話題づくり、年末商戦のためなのかも知れないし、商店街的な視点で見れば、訪れる人たちへの光のメッセージなのかも知れない。ある人に言わせれば、余計なお世話だし、無駄な予算そのものかもしれないし、新聞的な解説を試みれば、「街の光が、不況で苦難にある人たちの心を照らすような」という行が入りそうなものである。
流行の青色ダイオードで染められた街は、華やかさはあっても、温かさが幾分欠けているような感じがする。久しぶりに見る東京の街の光は、自分には少し刺激が強すぎるようだ。

他方で、個人的な好みを付け加えるならば、大晦日のカウントダウンは、やっぱり「行く年、来る年」で、雪の中を神社でお参りする風景が好きである。打ち上げ花火で盛大に祝うよりも、厳かに迎えたいものと感じている。クリスマスイブに花火が似合わないのと同じメンタリティーだと思う。

今日の写真、祖父母が送ってくれたミカンを職場の同僚に配ったが、三ケ日を知らないので、意外とびっくりさせられた。「みっかび」の字も分からない。甘すぎず酸っぱさがちゃんと立っている三ケ日みかんは独特のうまみがある。今年のは少し小ぶりながら、甘味の詰まった美味しい正しい地元の味である。

風物詩に好きや嫌いが入ってくるあたり、薀蓄が多くなって歳食ったなぁと思う。まぁささやかなこだわりあると言えば、風流にも見えてくるということで。

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