Thursday, February 28

For Safety, How Safety?

「デモの可能性がある」、たとえデマだと思っても、とりあえず情報の信憑性、真偽を確かめる。安全対策クラークに相談し、別の情報源との照合や背景を確認する。情報の確度が高いのであれば、必要な安全対策を検討し、それを実行する。

「明日の朝、省庁と会議がある。」「明日、準備を進めてきたセミナーを予定している。」と言っていた関係者の顔が思い浮かびつつも、明日の行動制限の可能性について検討する。自宅待機にするか、宿舎に近いので巻き込まれないよう事前に避難するか、警備の追加配置は必要か。回避可能な危険性について、やらなければならないことは、やっておかなければならない。

「自爆テロを企てているカローラ車両が市内に侵入している。」「車体色はグレーで、ナンバーは****」と言ったものや「グルカをかぶった女性2人が自爆テロを計画して市内に潜伏した」という情報も頻繁に入ってくる。こういう情報に常にさらされる方にとっては、ある意味感覚が麻痺してしまいそうなことだけれども、情報の確度、信憑性を確認した上で、安全情報をメールで送信する。

反政府勢力の活動が、昨年の同時期よりもペースが早い。冬季、幾分勢いが収まっていた事件発生数も、昨年より3週間くらい前倒しのペースで増えている。市内で起きた前回の事件から4週間事件が発生していないことから、確率的には近く事件が起きそう、そんな嫌な予測が出てくる。

自爆テロの発生件数は、朝7時から9時に集中。よって、確率的にはこの時間帯を避けるべきか、先週から朝の出勤時間を9時からに調整した。とはいいつつ、何が正しいのか分からない。

実際に狙われたら、逃げようがない。普段ターゲットにされない行動を心がけること、行動の際には細心の注意を周囲に払うこと。「Wrong Place, Wrong Time」。そこにいるはずのない場所に、その時間に行動するはずのないタイミングに事件へ巻き込まれる。

1月中旬に起きたカブールの高級ホテル「セレナホテル」の武装集団による襲撃事件。
カブール市の中心に位置し、民間施設ではもっとも警備の厳しいところとされる。車両の検査、荷物のX線検査、金属探知ゲート、いくつものセキュリティーをクリアしなければならない。一昨年5月に起きた市民暴動の際には投石等によって窓ガラスが割られるなどしたため、防弾ガラスを設置したり外壁を高くするなど施設の追加の安全対策強化を施していた。週末金曜日のブランチブッフェは一人30ドルもする。スパやジムが併設され、アロマオイルがロビーにこもれて漂っている。大使館主催のレセプションや援助機関のセミナー・会議も頻繁に行われ、多くの人が出入りする。カブールの喧騒を一時忘れることのできる空間として、このホテルはいつも混雑していた。
そんなホテルをターゲットにしたこの事件は、アフガンで働く外交使節、外国人、援助関係者にとって衝撃的なものだった。BBCは五つ星ホテルが襲撃されたと、中継していた。
4人組の襲撃犯は、車両チェックの門番数名を射殺してゲートを突破し、中に入ったところで、一人が自爆。大きな爆発音が響く。残りの3人はホテルロビーに向かい、1名は警備員によって射殺。2名はホテル内に侵入に成功し、スパ・ジム施設の方向へ銃撃を続けながら進んでいく。ジム内で銃を乱射して、実行犯1名は逃走。1名は拘束された。この時ホテル内にいた利用客にはノルウェーの外交使節団や政府高官等も含まれており、ホテル地下のバンカーへ避難したが、残念なことにアフガン人と外国人が10数名、犠牲になった。
非常に計画的で組織的な犯行とみられるこの事件は、一時、反政府勢力が無差別攻撃へ方針を切り替えたのではないか、ということでアフガン社会に衝撃が走った。これまでは多国籍軍やアフガン国軍、警察等がターゲットとされており、民間人はそれら施設や通勤車両を避けていれば比較的事件に巻き込まれる可能性は少ないとされていたからだ。
もちろん無差別攻撃への方針転換を主張する人もいれば、他方でこの事件は、欧米文化の象徴である施設そのものをターゲットとして、襲撃することによってメディア露出効果の高いカブール一等地のホテルを狙ったという見方をする人もいる。
このホテルからうちの事務所までは数百メートルしか離れておらず、自爆テロの爆発音も聞こえた距離にある。うちの事務所の警備は、このホテル以下の水準。そもそもセレナレベルの安全対策を施している施設は、大統領府や各国大使館、国会等主要な施設のみであり、ほとんどの援助機関は到底及ばない。狙われたらひとたまりもない。
ということで、この事件は、外国人のマインドを非常に悪化させることになった。(心理的効果を狙った敵勢力のもくろみはある意味で成功したといえる。)
各種のテロ情報、デモ情報、誘拐の危険。各関係機関の安全対策担当も、これまでは気にしなかったような小さな情報にも過敏に反応するようになり、一種の落ち着きを失いつつある。市内での活動におけるテロへの巻き込みを恐れて、外に出なくなった団体もあれば、安全サイドに立った厳しい関係者への行動規制を実施しているところもある。UNは、レストランでの外食禁止や自由な市内での買い物に制限をつけている。テロの脅威情報に接して、安全確保のため一時閉鎖された大使館もある。
何が正しい、どうすれば事件に巻き込まれない、という絶対的なセオリーはセレナ事件以降なくなったと言っていい。そもそもここに残り続けること自体、リスクを負っている。リスクを負ってここに来ていることは分かっていても、状況が好転しつつある中でのレベル5(1から10のスケール)の治安情勢と、状況が悪化しつつある中でのレベル5では、同じ安全レベルだったとしても、捉え方は異なり、マインドも違う。
どこに安全対策の軸をおくか、もちろん厳しい行動制限を実施して関係者の行動を縛ってしまえば、事件に遭遇する機会は減るだろうから、リスクも減るだろう。だが、ある程度のリスクを許容しなければ、この国での技術移転はできないし、前に進むことはできない。
「次に何かに巻き込まれたらアウト」そんなことが頭に浮かびつつも、次の方策を考える。
大使館の安全対策に対する考え方は極めて安全サイドに立ったものにあって、首を絞められいる感じのものであるし、現地で協力しているNGOの安全対策に対する考え方は、ローカライズすることによって地元に溶け込もうとするもの。3,000人のインターナショナルスタッフを抱える国連機関の安全対策はある意味システマティックで、個々の責任を明確したものとなっている。国連ほどの機動力と防御力は有していない。
半官半民のうちはどこに軸をおくか、明確な答えが出ない安全対策の議論を繰り返すことが多くなったこの頃。ゲストハウスの警備も最近になって強化された。誰もが疑心暗鬼。「信頼」という言葉が重い。

1 comment:

Unknown said...

うーっす。久々に行動開始って感じなのかね。

いやー、やっぱり間接的とはいえ、現地の生の情報ってのはなかなかリアル。
とはいえ、いまんとこr100%平和を教授してるのでほんとの所は自分もどこまでわかっているのやらって感じはするけどね。

後、なにげに知りたいなーと思うのは何時もレポートみたいな感じなんで、個人的にはどうやっていって、どうなったらいいと思ってるのかってゆー所。

まぁ、誰に向かって書いていて、誰が読んでるのかも知らないんで書いたら危ないとかだったらいいんだけど、なんとなく気になってたりするよ。

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