Saturday, May 1

夜風の調べ - スリランカ



スリランカ本島から道の両端を海に挟まれた約3kmのコーズウェイを駆け抜け、緩く弧を描いた新しくできたばかりの橋を渡ると、インドに手が触れそうな、もっとも近い街、マナー(Mannar)に着く。

2010年3月に完成したばかりのコーズウェイとマナー橋は、日本政府の支援で整備された。

4月第3週目は、スリランカのお正月。第一週に行われた総選挙も無事に終わり、2期目のラジャパクサ政権は盤石の態勢を整えることになりそうだ。

周りを海に囲まれたマナーはいつも風がある。ひどい夕立のあった今夜は少しひんやりした空気が流れていく。心地良い。窓の外から大きなスピーカー音が一緒に流れ込んできた。静かな街にちょっと場違いのような音を立てている。どこかで祭りごとのイベントが行われているようだ。

さっき急に若い青年が二人きて、今夜の客が増えたからと、部屋が欲しいという。結局、2つあった方の1つのベットを持っていった。もともと不釣合いに広い部屋に2つのベットがあったようなものだから、余計間が抜けた感じになった。

部屋のエアコンは壊れていて、天井ファンが低い回転音をたてて回っている。風呂は水シャワーだけ。夕食はいつものカレーで、今日は檸檬、生姜、青唐辛子と椰子の実を混ぜたスパイスが添えられていた。やっぱり辛いけれど、食べられないヒリヒリする辛さでもない。暑さと辛さで毎日汗だくになっている。

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スリランカ政府と四半世紀以上も激しく対立したタミルイーラム解放のトラ(LTTE)が陥落してから一年経ったスリランカ北部州。賑やかさを取り戻し始めていて、去る1月に来たときよりも人の往来は激しく、道路沿いの市場にはたくさんのモノがあふれている。国道沿いには大型看板が増えていて、民間資本の投資意欲を感じさせる。

旧LTTE勢力に警戒し、未だ要所要所に塹壕を残して展開している軍人も、緊張感が無く、手を振ると振り返してきた。検問所では、職務質問の変わりに、家族構成やら婚姻状況を聞かれる。独身と
聞いて驚いた顔をされてもどうしようもなく、苦笑いで返す。

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さっきのスピーカーは、司会が客の笑いを取ろうしているのが聞こえる。窓の外をみれば、星がずいぶんと綺麗だ。月の光に街がうっすらと青白く照らされている。ほとんどの家の電気がついていないのが分かる。どこで夜祭りが行われているのだろう。一階からは子供の泣き声が響いてきた。

遠くのスピーカーも、平和を取り戻した人たちの歓喜と思えば、また印象が異なる。
夕立の大きな雷鳴に驚いていると、「夜中に飛び交う砲弾に比べたらなんてことはない」と政府職員が笑っていたのを思い出した。ここは昨年まで夜間外出禁止令が出ていたところだ。

マナー橋には、平和を灯す明りとして希望をこめて設計された水銀灯が設置されている。
設計当時、橋梁の安全対策をかねて持ち出されたアイデアであったが、建設予算削減のために、橋の両側につける計画を片側に変更した。

いまだ街の灯りの少ないマナー。今では一番のデートスポットとして、男女が集う場所になっている…と聞いたが、シャイなスリランカ人はホントはそんな姿を見せない。実際行ってみると、家族連れや若者たちでにぎわっていた。芝生が植えられた法面は、子供たちの滑り台になっている。笑顔と歓声があふれている。

遠くのスピーカーはいつの間にか民族音楽らしい、太鼓の音と女性の高い声に変わっていた。


写真上: 夕暮れ時のマナー橋にて。多くの見物者で、違法駐車ならぬ違法駐輪が発生していた。
写真下: 紛争中退避していた村に住民たちが帰ってきた。子供たちの歓声が響いていた。

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