昼間の陽射しがあたたく感じられるようになり、長かった冬もいよいよ明けそう。日本にお付き合いするように先週みぞれが降り、寒さが幾分盛り返してきたが、雪解けの水は、夏枯れしていたカブール川に、流れを取り戻している。
啓蟄の頃のほのかに沈丁花や草花の香りを漂わせたしっとりとした柔らかい風の代わりに、往来の激しい車が巻き上げる埃っぽい空気のなか、、厳しい寒さを耐えていた人々の動きも活気を取り戻しはじめ、街通りにはドライフルーツや雑貨の露天商、携帯電話のカード売り、子どものタバコの火売りに物乞いの数まで増えてきた。
年度末もいよいよというこの段になって、日本からの出張者が多数、カブールを往訪中である。自分が担当する分もようやく半分終わったところだ。
今朝はアフガン道路セクターにおける民間業者の能力開発に関するUSAID主催のワークショップに出席。LuisBergerが受託して実施しているものだが、これで2回目。政府関係者・各援助機関関係者を集めて道路維持管理分野におけるCapacity Development (CD)(キャパシティーディベロップメント)の意見交換がなされた。実はこの分野における開発調査は4度目。WB(世界銀行)(幹線道路開発)にADB(アジア開発銀行)(道路開発マスター計画)そして昨春からは日本(道路維持管理システム)がそれぞれ調査を実施している。USAIDは、民間セクターのCDを対象としている。政府の実施能力(年間計画策定、予算管理、人材育成)の欠如、民間セクターの与信能力の欠如、恣意的な業者決定、低い施工品質。
この分野、担当して一年になるが、状況はほとんど改善していない。基礎インフラ整備(主要幹線道路の復旧)が中心となって援助資金の大部分を費やしている一方で、公共事業省を始めとする省庁の実施能力の強化は進んでいない。各省庁自身が自分たちで年間計画を策定し、必要なところに予算をまわし、行政サービスを提供する・・・ってことがまだまだできないのだ。そもそも省庁自身が大量の余剰人員を抱えており、ただでさえ不足している人件費をさらに圧迫している。開発復興と同時に行政改革も進むが、民間セクターの開発が遅れている現状では一般の仕事もなく簡単には解雇できないばかりか、微妙な民族バランスもあって所謂ところの調整人事も横行しており、理想的な美しい国づくりはそう簡単には進まない。結局、今日のワークショップも分かっちゃいるけれど遅々として進まない無い無いづくしの現状に、それぞれ担当分野から自己憤懣や苛立ちみたいな意見が相次いだ。開発計画や援助政策と言った理想像への議論を続けるよりも、実際の行動変容のための具体的な政策の実施や国際支援が求めらている。
とある省庁への表敬の際、大臣にアフガンにおける行政サービスの課題は?とお尋ねしたところ、アフガン政府の行政サービスが行き届いていない地域に対する重点的投入が焦眉であるとの回答だった。アフガン政府の代わりにタリバンやアルカイダが地元住民への支援の手を差し伸べれば、地元の部族は自分たちを支えてくれるほうを支持するだろう、との危惧が背景にある。アフガンの南部や南東部で活発なタリバンは、最近になって地域の学校建設の支援をしているとも言われる。またそれ以上に換金性の高い麻薬栽培を支えており、代替作物の切り替えや産業振興が進まない現状で、麻薬撲滅や資金源の根絶は一向に捗っていない。アフガンの治安維持を担当しているNATO主導の国際治安維持部隊(ISAF)は、PRT(Provincial Reconstrucation Team)(地方復興チーム)を形成し、タリバンを追い払った地域の地元住民への支援のための緊急インフラ支援(道路整備や学校・クリニック建設など)を治安維持任務と同時に展開中である。またUSAIDはローカルNGOへの委託を通じた行政サービス(主に基礎保健医療サービス)の展開を大規模に実施中である。なんとなく陣取り合戦のようにも思えるが、これは一つの戦いなのだと改めて思う。そしてそんな攻防がこの春、ひとつの山場を迎えることになると言われている。
日本の技術協力スキームにおいては、こういった面的な支援展開のノウハウは少なく、省庁に対するCD支援がメインとなってくる。しかしながら、優秀な人材は給与水準の高い外国政府機関や援助機関に取られてしまい、省庁側の役職員の陣容の貧弱さが、安定的な行政サービス復興に対するボトルネック(足かせ)となっている。高騰し続ける物価の中で、生活維持のためには給与の良いほうに流れていくのは避けられないとしても、各援助機関が多種多様なCD研修(トレーニング)を実施しながら、一向に能力の定着や実施体制能力の向上していかない。人材の定着にかかる懸念については、ほかにも原因があるが、これはまた次回に。
平和の訪れ(安定)なくしては、経済発展や人材定着は進まず、真の復興はやってこない。改めて感じる先の長い道のりに溜め息の耐えないこの頃である。
昨夜の関係者の歓送迎会の帰り、ふと見上げると小枝に新芽が吹いていた。気温は5度。まだ息が白かった。昨月に3年ほど愛用していたデジカメを紛失。再来月の帰国時には再購入する予定だが、しばらく写真が撮れないのが残念なところ。むむむ・・・。
Saturday, March 17
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