Monday, January 29

みちのむこう

年明け早々、オーストリア国内のハンガリーとの国境に近い小さな町"Stadtschlaining"にて「平和構築」研修に参加した。
“International Civilian Peace-Keeping and Peace-Building Training Program"というコースで、講義と実習、シュミレーションを組み合わせて構成された2週間のプログラム。


参加者は世界各地からスーダンやルワンダ、ガーナ、エリトリア、パキスタン、パレスティナ、アフガン、オーストリア、フィンランド、イギリスなどなど25名、途上国からの参加者には奨学金が付いていた。


紛争現場から来ている人(NGO、国際機関スタッフ)もいれば、これから平和構築の現場に参加したいという人(スキルアップ中、求職中)もいて、参加者間のバックグラウンドや課題意識は様々であった。


自分自身の「いま抱えている問題を参加者間で共有して何らかの課題整理を」という期待は外れたものの、政府系援助機関とは違った視点からの問題意識、いまの仕事に対する他者の視点を知ることで学ぶところは多かった。


会場となった町は、かつて東欧と西欧を分断する境界に位置していたことから、旧東欧諸国の欧州再統合とボスニアヘルツェゴビナ問題へのEU/NATO/OSCEのアプローチを教訓とし平和へのアプローチを学ぶ場として選ばれ、"Austrian Study Center for Peace and Conflict Resolution"が設置されているところである。


欧州は体系立った理論形成がやはり上手くてさすがだ、と感じさせる講義内容であったが、他方、現場における理論の実践についての検証が、講義では十分にカバーしていなかったのが不満であった。
理論は分かる。でも現実問題としてうまくいっていないのはなぜだぁ~、と問い詰めたいところだった。
各講師に対しては、現場経験者からのコメントがぶつけられるが、どうもこれらも自分たちにとっての特有の問題は・・・という話しぶりで、最初は面白かったが、途中から似たような方向性で飽きてしまった。理論と現場の乖離をどう考えるかが大事とは思いつつ、各事由の固有の問題も大きすぎて、一般化して経験を共有しづらいところも頭が痛いところである。(ということは、アフガン担当者は今後も社内でアフガン担当??・・・・というのは避けたいところ。地域性よりも課題別アプローチの方が自分の性に合っている気がする。)

授業後のBARタイムがディスカッションの場となった。
個人的には、「CIMIC(軍民協力)」のコマが興味深かった。
緊急復興および治安の安定しない初期の復興支援において、自分で自分の安全を確保しながらインフラのリハビリができる実施能力は、有効な手段の一つと考えている。軍と民間を結び有効なアプローチを模索していこうという考えが生まれたのは、軍側だったそうだ。あまり知られていないが、イラクにおけるサマーワにおける自衛隊の活動は、日本によるCMICの先駆事例と言える。
防衛省に格上げとなって国際貢献が活動項目に位置づけられた日本の自衛隊。アフガンに派遣される日は近いのだろうか・・・?(草の根テロ活動の多いアフガンでは、無傷ではいられないと思うが。)

EUの人たちと直接話す機会があったのも貴重な体験であった。進化し続けるEUと経済統合のダイナミズムをそこに生きる人たちがどう考えているのか、何を感じているのかを少し触れることができた。今回の参加者は特に外に出て行って貢献したいという人たちの集団であったこともあるが、統合のダイナミズムに揺れるキャリア形成やパートナー、価値観に対し、たくさんの刺激と考えるきっかけを与えたられた。なんというか、もっともっとエネルギッシュに生きなくては!と思った次第です。均質な日本とは全然違う、意外と地味なんだけど大きなうねりを感じさせるEU。面白い。今後の発展に巻き込まれてもいいかなとも思った。

多国籍職員で構成される国連は日々が異文化コミュニケーションで、他人に寛容な分、無駄も多いといわれる。他民族で構成されるEUも、毎日の生活が異文化コミュニケーション。
援助の世界でのトレードコストの高さは非難されるべきものであるが、EUにおけるトレードコストが生み出す動態に、EUの潜在的発展性がありそう。無駄さ加減の中で、様々な調和が新しさを生んでいると思いたい。(実際には骨の折れることだとは思うけど、その中で育った若い世代は、間違いなく次世代型価値観を見につけているはず。)

平和構築研修で、すっかり平和ボケの毎日であったが、気分転換にも良かった。
まだまだやれること、やるべきことは多いなぁと気合を入れなおしつつ、
帰ってくるなり山積していた仕事を前にして、一気に現実モード。(というか年度末モード?)

机の上には、オーストリアから出した自分宛の葉書がもう届いていた。

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