Friday, May 12

Underconstruction

先々々週に思ったこと。
復興期にあるこの国の支援において、担当する保健医療・インフラ復旧においても問題は山積しており、情報収集だけでも手一杯で、自分がここで仕事をするに当って、何から手をつけたらいいのか、目眩を覚えた。とにかく前任からの引継ぎの仕事を停めないようにすることで精一杯になるのではないかと思った。

先々週思ったこと。
この国における様々な国際機関やNGO、政府機関の支援内容を知るにつれて、各々の機関が得意な分野・支援の形が見え易い分野でプロジェクトを実施し、様々な分野・地域において総花的な支援が展開され、一部では中央政府がコントロール(把握)できない中で、支援機関同士が支援実施地域に関する確執が生じた例も見た。
それら支援は、政策や国家再建計画との一貫性がないため、援助機関が手を引けば、それきりそれらの支援が途絶え、元の木阿弥に戻る事例も見られる。また公共施設の復旧支援をしても、担当する省庁がそれを維持管理することがままならず、数年たって故障や支障をきたしている事例を見た。
援助における政府関係者の取り込みと、支援機関同士の調整能力(ドナー会合)の重要性を強く感じた。

先週思ったこと、
この国は、津波や地震のように生活基盤が崩壊しているだけではなく、政府機能自体が崩壊している。財政基盤も崩壊しており、政府が自立的な政策を打ち出し、それを実施するだけの予算を持てないでいる。だから、せっかく復旧した道路も、維持管理ができず、再び穴だらけの道路に戻ってしまったり、せっかく供与した病院機材もメンテナンスができずに壊れたそれっきり放置されている事例もある。
収益性のある事業については、自己資金によって組織を運営するための仕組みづくりを行い、自立的に政策実施ができる体制造り(制度作り、組織体制の再構築、人材育成)が急務であると感じた。
ところが所謂NGOは草の根的な支援(コミュニティーベースの保健医療とか、地雷教育など、直接人の手に届く支援)には強くても、こういったマクロ的な支援には弱く、一方で国際機関はというと、開発コンサルタントへの業務委託し、政策立案を支援するものの、分厚い制度改革のためのレポートを残していくばかりで、それが実行に移されないことが多いように感じた。どんなに優秀な頭脳集団による素晴らしい政策提言であったとしても、それが実施されなければタダのゴミである。
この国が求めているのは、分厚い政策提言ではなくて、経験に基づいた適切なアドバイスが適時にできる政策アドバイザーでないかと思う。こういった類の専門家の派遣は、実は比較的日本の評価が高い。大臣や副大臣の補佐となり、状況に応じて相談できる面倒見の良さは日本ならではである。

今週思ったこと。
各援助機関も馬鹿ではない。むしろ自分の現状認識への理解が遅れている(勉強不足)だけである。今週参加したドナー会合においても、各援助機関が行政官研修や技術セミナーを開き、キャパシティービルディングと呼ばれる人材育成支援を強化しつつある現状を見た。ドナー間のコーディネーション会議を開き、同じセクターにおける支援内容の重複を避けて、相互の強みを生かした住み分けをしながら援助を行っていく動きが定着しつつある。
しかしながら、ここでの問題はやはり政策の欠如にある。社会制度が崩壊しているため、統一的な基準がないまま定められていない。政府基準=工業規格・医療標準だったりするので、いろんな国が自分の国や地域にやり易い(そのまま)制度を使って支援が展開される。たとえば道路復旧の例で言えば、欧州連合、英国、アメリカ、日本、中国、アジアンハイウェー、ロシア、旧ソ連と実に様々な規格で道路整備が行われている。基準が違えば、それだけ維持管理方法も変わるし、コストも跳ね上がる。いまはアジア開発銀行(ADB)が積極的な道路復旧支援を展開しており、この国ではADBの採用するアジアンハイウェー規格が事実上のデファクトスタンダートとなりつつある。
先に述べた人材育成のための研修を行うにしても、研修を行う国の基準が反映されれば、人材毎の持つ適正基準がバラバラとなり、円滑な事業実施の妨げとなりかねない。人材育成の分野においても、支援機関同士の調整が不可欠となるが、十分な連携には各支援機関の思惑もあり、うまく行っていないように思われる。
そして、社会制度設計のような会議においては、政府関係者の参加はもちろん、支援機関同士の連携が重要となるが、こういった会議はちょくちょく紛糾する。

ドナー会合では、各支援機関が抱える実施上の問題点を共有する絶好の機会でもある。電力セクターでは、PMU(=Project Management Unit)がエネルギー・水資源省内に形成され、各ドナーの実施プロジェクト情報を一元的に管理できる体制が構築されている。今週行われた会議では、先月末起きたカンダハールでのインド人技師の誘拐及び殺害事件を受けて、送電網建設計画におけるインド人技術者の安全管理について、インドの施工会社より担当省に強い要請があった。また、土地の取得について、各ドナーの経験をまとめつつ、第一義的には政府の法令に基づき適切に対応しなければならないことが確認された。何をするにしても問題は山積である。

そんなこんなで迎えた週末。
物事は一度に解決しない。
そして一つ一つのプロセスにおいて、とにかく自分の意見を主張する輩が多い。
説明がくどかったり、延々と自説を主張したり、マイナーな技術論に終始したり。
とてもじゃないが、ストレスが溜まる一方。

目に見える成果も大事。
5年10年先を考え、マクロ政策の支援も大事。
援助がなくても自立的な政策運営ができる財政基盤を形成することも大事。

「広い視野で、先を見て物事を進め、通りいっぺんで無い政策を思いつく。どうすれば難民が死なないで済むかだけでなく、どうすれば難民が尊厳ある生き方ができるかまで考えていた」とは緒方貞子氏の言葉。

先は長い。

1 comment:

Anonymous said...

難しいな(´~`)
俺の、思ったことは将来の不安だな(-。-)y-゜゜゜

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